~複雑連鎖する社会構造の地殻変動とAI主導となる時代 企業経営、社会の在り方をデジタルリーダーが徹底討論~
一般社団法人CDO Club Japanは、企業のDXの推進リーダーとして活躍するCDO(最高デジタル責任者)、CAIO(最高AI責任者)が一同に集結する国内唯一のイベントであるCAIO & CDO Summit Tokyo 2025 Summerを2025年6月4日~5日の2日間で開催した。
2025年は、トランプ政権の再登場を契機とした米中対立の激化、保護主義の強化、そして関税政策に伴うグローバルサプライチェーンの再編といった、世界規模での「非連続的変化」により、ビジネスにおける競争のルールそのものが書き換えられている。加えて、AIの急速な進化と普及は、消費者の行動だけでなく、ビジネスの慣習や価値観をも急速に変容させている。今後はAIを基軸としたビジネスの再設計が求められる時代に入った。
今の複雑な非連続変化の時代において、**デジタルトランスフォーメーション(DX)**はこれまでのアプローチから劇的に進化し、AIを中核に据え、テクノロジー、地政学、人的資本などを統合し、価値観や産業構造、組織を再設計する、いわば「経営のOS」を再インストールすることが必須になる。
今回の「CDO Summit Tokyo 2025 Summer」では、上記の劇的な環境変化において、CDO Club JapanのメンバーであるCDOたちが集結し、激しい議論を行った。
CAIO Summit Tokyo 2025 Summerの概要
テーマ:量子×AIの新しい社会 〜生成AIブームのその先にあるAI社会とは?~
開催日 2025年6月4日 14:00~19:00
初日の「CAIO Summit Tokyo 2025 Summer」では、「生成AIブームのその先にあるAI社会とは?」をテーマに、国内で既にCAIOを設置している企業のCAIOや、CDOとしてCAIOの役割を兼務するCDO Club Japanのメンバーが集結した。生成AIの発達に伴い、多くの企業・団体・個人がAIをあらゆる領域で活用する時代に、大規模LLMやパーソナルAIのその先にあるAI社会の可能性について議論が交わされた。
オープニングスピーチ:CDO Club Japan 代表理事 加茂 純
冒頭開会の挨拶として、CDO Club Japanの代表理事の加茂純より、米国のトランプ政権が導入した新たな”共同体主義”の影響と、積極的なAI政策によって起きる変化と脅威について言及した。
また、AIは、技術変革ではなく、社会構造を塗り替える「触媒」であり、いまや世界一「AIフレンドリー」となった日本は、AIとの「共創パートナーシップ」により、日本が飛躍し、世界に貢献できる最大のチャンスであると言及した。
海外のCAIO並びにAI関連の動向アップデート:
David Mathison 米CDO Club CEO&創立者
CDO Club Japan 理事・事務総長 水上 晃
続いて、「海外のCAIO並びにAI関連の動向アップデート」と題し、CDO Club Japan理事・事務総長の水上 晃が、AI技術の現状と今後の発展方向性について解説した。また、米CDO Club CEO兼創立者のDavid Mathisonからは、米国におけるCAIOの需要が急激に上昇している現状と、米国でもCAIOが不足している実態について説明があった。
量子×AIが実現する新たな社会変革とは?
北川 拓也 氏 QuEra Computing 元楽天CDO
特別基調講演では、元楽天CDOで、現在は量子コンピュータースタートアップの責任者を務める北川 拓也氏が登壇。「量子×AIが実現する新たな社会変革とは?」と題して講演を行った。
講演では、量子コンピューターが急速に社会実装フェーズに入っていることに触れ、従来の計算資源では不可能だった分析が可能になることによる可能性が示された。また、AIと量子技術が相互に連携することで、指数関数的な発展を遂げる可能性についても解説があった。
このような変化により、これまで実験による検証が必要だった未開拓分野においても、計算科学の進化によって理解が急速に深まり、現実世界に存在する課題解決の実現性が高まることが強調された。
後半では、当団体の代表の加茂純と、同氏が量子コンピューターに注目した背景について伺うとともに、量子コンピューターの技術が、日本企業のDXに対してどのような意味と価値を持つかについて対談形式で議論を実施した。
CAIO(最高AI責任者)とCDO(最高デジタル・データ責任者)によるビジネスパネルセッション
CDO Club Japanに参画するCAIO並びにCDOが参加するビジネスパネルセッションでは、昨今の社会情勢の変化に対して、CDO Club Japanに参画するCDOが一堂に集まり議論を行った。
生成AIの発展に伴い、多くの企業・団体・個人があらゆる領域でAIを使う時代が到来しようとしており、今後さらに大規模AIが発達し、あらゆる分野にAIを搭載する時代では、従来のコンピューターの概念では処理時間やコストの問題に直面すると予想される。
この状況に対して、今後の重要技術として注目される量子コンピューターに対し、欧米諸国は重点投資領域として様々な団体や企業が投資を進めているが、日本では量子コンピューターの優位性や重要性がまだ十分に認識されておらず、今後のAI×データ×量子コンピューターの時代の到来に遅れをとる可能性がある。
そのような変化の状況を受けて、当日のCAIO(最高AI責任者)サミットでは、企業でAI導入に取り組むAI責任者とともに、今後のAI分野の発展の可能性として、大規模LLM、パーソナルAIのその先にあるAI社会の可能性について以下のテーマについて議論を実施した。
テーマ1:日本におけるAI活用の現在地は?
日本のDXに取り組む主要企業のAI活用・導入の状況とは?
テーマ2:企業経営におけるAIの活用の意味と価値とは?
AIの企業・社会利用が進む中で、AIのリーダとして信頼あるAIを導入していくためにどのような課題があるか?
テーマ3:量子×AIの時代を見据えて
AIの社会普及の先にある量子的変革を支えるAI活用のあり方とは?
ビジネスパネルセッションでは、それぞれの立場で現在どのような形でAIと向き合っているか、AIを効果的に機能させるために重視していくべき点について活発な議論が行われた。
当日参加いただいたCAIO(最高AI責任者)CDO(最高デジタル・データ責任者)の方々
・磯和 啓雄(株式会社三井住友フィナンシャルグループ)
・西畑 智博(株式会社JALカード)
・谷川 圭史(日揮ホールディングス株式会社)
・藤本 宏樹(住友生命保険相互会社)
・中川 邦昭(住友生命保険相互会社)
・ルゾンカ 典子(コスモエネルギーホールディングス株式会社)
・水野 誠 (栗田工業株式会社)
・前田 雄史(栗田工業株式会社)
・岡本 浩(東京電力パワーグリッド株式会社)
・榎本 英二(野村不動産ホールディングス株式会社)
・吉田 茂史(株式会社北國フィナンシャルホールディ ングス)
最先端のAI技術を有するテクノロジー企業の各種講演の実施
上記のビジネスパネルセッション以外でも、CAIOのカンファレンスにふさわしいAIの最先端技術を有するテクノロジー企業からAI技術に対する解説の講演があった。
当日講演およびテクノロジーセッションにご参加いただいいたテクノロジー企業と講演者
・クリックテック・ジャパン株式会社 今井 浩 氏
・ニュータニックス・ジャパン合同会社 牧田 延大 氏
・Notion Labs Japan合同会社 生垣 侑依 氏
・株式会社PKSHA Workplace 山本 健介 氏
・Twilio Japan合同会社 久保 敦 氏
なかでも、AI技術を中心とした論点を議論するために「テクノロジーセッション:AIの技術の現時点理解と将来の可能性を考察する」と題して、当団体の事務総長の水上をモデレータとして、株式会社PKSHA Workplace 山本 健介 氏とTwilio Japan合同会社 久保 敦 氏をパネラーとしたパネル討議を実施した。本パネルでは、AIの最新の動向や将来の展望について議論を実施した。
CDO Summit Tokyo 2025 Summerの概要
テーマ: DX・EXによって生じる従来の既成概念・価値感の破壊と新たな産業・価値観の創出
~AIがベースとなった時代の企業・経営・ビジネスの在り方を再定義する~
開催日 2024年6月5日 11:00〜18:00
2日目の「CDO Summit Tokyo 2025 Summer」では、「AIがベースとなった時代の企業・経営・ビジネスのあり方を再定義する」を主題に議論した。
トランプ政権の再登場によって加速する米中対立、グローバルサプライチェーンの再編、保護主義の強化といった「環境の非連続的変化」。これに加えて、AIの急速な利用と普及が引き起こす、従来の慣習や価値観の崩壊に対応するため、AI駆動型ビジネスの再設計が不可欠となっており、経営は「価値観」「産業構造」「組織のあり方」までもを根本から刷新する、“企業の再設計”の視点が重要となっている。
そのような局面に対して、CDO Club JapanのCDOのメンバーが会場に集まり議論を実施した。
オープニングスピーチ:CDO Club Japan 代表理事 加茂純
冒頭開会の挨拶として、CDO Club Japanの代表理事の加茂純より、デジタル・AIの最新技術の劇的な進化により、日本はAIと共創する社会を目指す必要性、また社会・組織・教育を再設計することの必要性についても言及した。最終的にはAIとのパートナーシップにおいて、人間の本質 — 意識と共感ーが重要となる点についても述べた。
デジタルニッポン2025 世界と戦えるデジタルニッポンの実現に向けて デジタル政策2.0に向けた提言とは?:
平井 卓也 衆議院議員
続いて、初代デジタル大臣であり衆議院議員である平井卓也議員より「デジタルニッポン2025 世界と戦えるデジタルニッポンの実現に向けて デジタル政策2.0に向けた提言とは?」と題してスピーチと当団体の代表の加茂との対談が実施された。
冒頭、平井議員からはデジタルニッポン2025の策定の背景となっている日本のデジタル活用の世界ランキングの低さに言及し、特に日本全体に蔓延する生産性の低さについて過去の日本の働き方改革が時間ベースで議論されてきた点についての課題に触れ、デジタルを活用した生産性が本来の改革である点について言及された。
またAIについては国際的に見ても現在日本は法律面や計算資源の環境含めて、最も挑戦しやすい環境である点を述べ、世界の主要AIプレイヤーが日本に参入したい状況である反面、日本の企業がAIを活用出来ていない状況に対する課題感についても言及された。
最後に代表の加茂とともにAI技術の更なる発展の動きとグローバルにおける日本の役割の重要性について相互の意見を踏まえた対談を行った。
国内の主要企業のCDO(最高デジタル・データ責任者)が集結したCDO Roundtableによる議論
その後CDO Club Japanに参画するCDOが参加するCDO Roundtableでは、昨今の社会情勢の変化に対して、一堂に集まり議論を行った。
当日は、「DX・EXによって生じる破壊と新たな産業・価値観の創出」をテーマに、トランプ政権によって生じている環境変化に加えてAIの活用と進化を踏まえた、将来の経営システムや顧客接点のあり方、ならびに人材そのものの役割や価値の変化といった大きな変化の方向性について、それぞれの視点で以下のテーマに対して議論を展開した。
テーマ1:企業経営モデルの変化
パーソナルAI/AIエージェントが従業員として機能する時代の企業経営はどう変わるか?
テーマ2:顧客との関係や社会行動・商取引の変化
個人や顧客がAIやエージェントを利用する時代になることで商取引やCXはどう変わるか?
テーマ3:業界を超えた買収と連携によって生み出される産業や社会システム
データ共有・AIの進化によって企業・法人・業界の垣根が融合・再生されていく中で生じるシェアリング型の社会構造や経済システムとはどのようなものになるか?
テーマ4:従業員・人そのものの役割や価値の変化
プロセス維持・均一型の人的資源や人材を優位とした世の中からAIによって変化する人材の役割や優位性とは?
CDOが現在企業で取り組む中で生じている課題を共有するだけでなく、業界の壁を壊し新しい産業構造、新しいビジネスモデルを生み出す活動を展開することで、デジタルリーダーが取り組む今後の活動の方向性について活発な議論が行われた。
当日議論に参加いただいたCDO(最高デジタル・データ責任者)の方々
・楢崎 浩一氏(SOMPOホールディングス株式会社)
・安田 裕司氏(三菱UFJニコス株式会社)
・三瓶 雅夫 氏(三井化学株式会社)
・磯和 啓雄 氏 (株式会社三井住友フィナンシャルグループ)
・伊勢 勝巳 氏 (東日本旅客鉄道株式会社)
・上ノ山 信宏 氏 (株式会社みずほフィナンシャルグループ)
・奥山 博史 氏(ヤンマーホールディングス株式会社)
・巽 達志 氏 (住友商事株式会社)
・汐満 達 氏 (住友生命保険相互会社)
・樋口 正也 氏 (ロート製薬株式会社)
・原田 典明 氏(旭化成株式会社)
・金澤 祐悟 氏 (株式会社LIXILグループ)
・橋場 一郎 氏(株式会社KADOKAWA)
・水野 誠 氏(栗田工業株式会社)
・前田 雄史 氏 (栗田工業株式会社)
・矢吹 哲朗 氏(東洋紡株式会社)
・古田 貴 氏 (三井不動産株式会社)
・坂 健司 氏 (株式会社トクヤマ)
・三枝 幸夫 氏(クールスプリングス株式会社)
・榎本 英二 氏 (野村不動産ホールディングス株式会社)
・宇田 真也 氏 (株式会社オリエントコーポレーション)
・戸島 仁嗣 氏 (国際協力機構(JICA))
・吉田 茂史 氏 (株式会社北國フィナンシャルホールディ ングス)
・上原 英樹 氏 (サンヨー食品株式会社)
・亀山 満 氏 (協和キリン株式会社)
最先端のデジタル技術を有するテクノロジー企業の各種講演の実施
CDO Roundtableの他、本格的なAI活用を支えるための技術を持つ多くの企業の方より「最新のデジタル技術の活用事例」や「AIを支えるセキュリティ」「AIテクノロジーの導入アプローチ」に関しての多くの講演があった。
当日講演いただいいたデジタルテクノロジー企業と講演者
・パロアルトネットワークス株式会社 伊藤 悠紀夫 氏
・TX One Networks Japan 今野 尊之 氏
・株式会社セゾンテクノロジー 石田 誠司 氏
・Workato株式会社 鈴木浩之 氏
・Dataiku Japan株式会社 佐藤 豊 氏
・株式会社コンカー 橋本 祥生 氏
・株式会社セールスフォース・ジャパン 松本 英人 氏
今後もCDO Club Japanは、グローバルにて幸福な社会を築くために、米CDO Clubと連携して、全世界のCDOとともに、企業・政府自治体、社会全体のDXを推進し、グローバルの中での日本全体のDXの価値向上に貢献をいたします。